投資において重要な戦略の一つである「分散投資」について、元クオンツの視点から詳しく解説します。分散投資とは一体何か、そしてどのように行えば良いのかを具体的な例を交えながら説明します。
分散投資とは?
分散投資とは、リスクを減らし安定したリターンを得るために、複数の異なる資産に投資を分散させる手法です。
一つの資産に集中投資すると、その資産が値下がりした際のリスクが非常に高くなります。
しかし、異なる資産に分散して投資を行うことで、一つの資産が値下がりしても、他の資産がその損失を補うことができ、全体のリスクを軽減することができます。
例えば、株式と債券、国内資産と国外資産、異なる業種の株式など、様々な組み合わせで分散投資を行うことが考えられます。
良い分散投資とは?
良い分散投資を行うためには、投資先の資産同士の相関関係を理解することが重要です。
相関とは、二つの資産の価格がどのように連動して動くかを示す指標で、-1から1の間で表されます。
相関が1に近い場合
二つの資産がほぼ同じように動きます。例えば、自動車メーカーAと自動車メーカーBの株価は、同じ市場や経済環境の影響を受けやすいため、高い相関があります。
この場合、どちらかの株価が下落するともう一方も下落する可能性が高く、分散効果は低くなります。
相関が-1に近い場合
二つの資産が逆の動きをします。例えば、株式とその保険としての債券は、株価が下落すると債券価格が上昇することが多いため、相関がマイナスになることが期待されます。
このような組み合わせはリスクヘッジに有効ですが、利益も抑えられてしまうためローリスク・ローリターンになりやすいです。
相関が0に近い場合
二つの資産が独立して動きます。例えば、食品メーカーの株式とIT企業の株式は、異なる市場環境の影響を受けるため、相関が0に近くなる傾向があります。
相関が0に近い資産同士を組み合わせることで、最も効果的な分散投資が可能となります。
実際の相関関係
本記事では、幾つかの実績データを用いて具体的な相関関係を調べてみました。独自のデータと方法で計算しております。2022年1月から2024年6月までの日次リターンを用いて計算しております。
投資判断の参考にする場合は自己責任でご判断ください。
資産クラスにおける相関
資産クラス間の相関を計算してみました。
日経225とS&P500は0.76と高い相関になっています。株式はその国の経済状況の影響を受けやすく、日本経済はアメリカ経済の影響を受けやすいため、相関が高くなりやすいです。
国内株と米国株の組み合わせは分散投資の視点では少し物足りないですね。
国内債券はどの資産クラスともかなり低い相関関係となっています。
リスクを減らすには魅力的な資産ですが、リターンも総じて低いことが多いため個人投資家間では人気が低いです。国内債券の代わりに社債を持っている方は一定数いるイメージがあります。
金(ゴールド)は購入されている個人投資家の方も多いイメージですが、リスク資産の逃げ道として買われることも多く、日経225やS&P500との相関がかなり低いことが伺えます。
金(ゴールド)単体ではリスクが大きいイメージがあるもののリターンも大きいため、相関の低い株式と組み合わせるとかなり良い分散投資となりそうです。
国内株における業種間の相関
日本株における17業種区分の相関表を作ってみました。過去の実績から計算した結果ですので、参考程度に見ていただければ幸いです。
こちらの結果は、2020年1月から2024年6月までの日次リターンを用いて計算しております。
日本株に限定していることもあり、最低でも0.27の相関があり、全て正の相関となっています。より低い相関の組み合わせを作りたい場合は外国株や債券を組み合わせる必要が出てきます。
相関が高い例としては、「電機精密」と「機械」の相関が高く、この2つの業種だけで銘柄を組み合わせてもリスクが下がりにくいことを示唆しています。
電力ガスや小売、銀行、エネルギー資源はどの業種とも総じて相関が低く、分散投資に適した業種であると考えられます。こういった視点を実際の投資で加えていくことで、安定した収益が得られやすくなっていきます。
まとめ
分散投資は、投資のリスクを減らし、安定したリターンを得るための重要な戦略です。相関関係を理解し、相関が0に近い資産同士を組み合わせることで、効果的な分散投資を行うことができます。
相関を確認しつつ、バランスの取れたポートフォリオを構築することで、ローリスク・ミドルリターンを達成しやすくなります。
分散投資の基本を理解し、自分に合ったポートフォリオを作成することが、成功する投資の第一歩です。
リスクを抑えつつ、安定したリターンを目指して、賢い投資を心がけましょう。
金融機関の資産運用部門においてクオンツとしてのキャリアを約5年間積んだ後、現在はデータ分析に特化した受託会社に勤めています。
このサイトも、それら知見を活かして作成しております。
noteも書いているので良ければ見てってください!