木曜組曲 〈新装版〉 (徳間文庫)
- 耽美派小説の巨匠・重松時子が薬物死を遂げて四年。時子に縁の深い女たちがうぐいす館に集い、思い出に浸る中、謎のメッセージが届き疑惑と秘密が交錯する。
- 死の真相は自殺か他殺か。ライターや作家、編集者らが明かす告白の応酬が息をのむ、深層心理を描くミステリー『木曜組曲〈新装版〉』。
- 耽美派女流作家・重松時子の死の謎が軸に展開される心理ミステリー
- 女性5人のやり取りと、それぞれが抱える葛藤・秘密が見どころ
- ポジティブな意見では「映画化作品としても楽しめる」「心理劇が奥深い」との声多数
- ネガティブな意見では「盛り上がりに欠ける」「動きが少なく退屈」との批評も
- 女子会のような雰囲気や、巧みな人物描写が好きな方にはおすすめ
木曜組曲 〈新装版〉(徳間文庫) について
- タイトルどおり、木曜日に集まる女性作家たちが中心となる物語
- 死の謎をめぐる会話劇を通じて、それぞれの人間関係や思惑があぶり出される
「木曜組曲 〈新装版〉(徳間文庫)」は、恩田陸さんが手がける心理ミステリーです。耽美派小説の巨匠である重松時子の薬物死から四年が経ったある日、時子を囲んでいた女性5人がうぐいす館に集まり、毎年恒例の会を開きます。しかし、その会は謎のメッセージをきっかけに、静かな火種が少しずつ大きくなり、真相を暴き合う告発劇へと変貌していきます。登場人物はみな出版や執筆に関わっている女性ばかりで、それぞれが時子の才能に魅了され、あるいはその才能に怯え、人生を翻弄されてきたという共通点があります。物語は、自殺か他殺かさえ定かでない時子の死に関わる様々な告白が飛び出しながら、真の姿を探っていく構成になっています。
木曜組曲 〈新装版〉(徳間文庫) のポジティブな意見や口コミについて
- 映画化作品として映像で楽しめる要素がある
- 女性5人の緊迫感ある心理戦が興味深い
- 食やお酒の描写など独特の「恩田陸ワールド」に没入できる
- どんでん返しや結末が印象的との声も多数
多くの読者がまず挙げている
のは、“舞台劇のように物語が展開する”という点の面白さです。密室空間ともいえる屋敷の中で、登場人物たちがひたすら会話を交わす展開が特徴的で、「集まっておしゃべりをしているだけなのに緊張感がある」という意見が目立ちます。
また「映像作品としても見てみたい」と感じた読者が多く、中には実際に映画版を視聴して味わいを比較した人もいました。映画版独自の改変が加わっており、そこの違いを楽しめたという声もありましたが、「原作のオチのほうがしっくりくる」という人もいて、両方を読む・観ることで作品をより深く味わえるようです。
さらに、物語の大半が屋内とその周辺で行われ、登場人物も限られるため、“心理ミステリー”としての完成度の高さを評価する方も多いです。特に5人の女性全員が豊かな個性を持っており、作者自身がモデルになっている部分もあるのではないかと推測されるほどのリアリティがあるとも言われています。
食事やお酒にまつわるシーンも多く、「女性が集まってわいわい飲み食いしながら秘密を暴露していく感じは読んでいて面白い」という評価も目立ち、同時に「自分もその場に参加しているような感覚を味わえる」のもプラス要素として挙げられています。
木曜組曲 〈新装版〉(徳間文庫) のやばい噂や悪い評判・口コミについて
- 「地味で動きが少なく退屈」という意見
- 「肝心な時子の魅力が伝わりにくい」との批判
- ストーリーの盛り上がりに欠けるとの指摘も
一方で、本作に対するやや手厳しい意見もいくつか散見されます。まず「本格ミステリーとして期待して読むと肩透かしを食らう」という声があります。確かに、派手などんでん返しや捜査・推理の要素を前面に押し出すタイプではなく、あくまで“人間ドラマ”が主軸の作品なので、強いスリルを期待する方には物足りないかもしれません。
また、ストーリーに占める女性同士の会話シーンが大半を占めるので、「飲食やおしゃべりが延々と続くだけで退屈」と感じる読者もいます。5人が大量のお酒を飲む姿に嫌悪感を示したり、「もう少し動きのある展開がほしかった」という声もあります。
さらに、肝心の“重松時子”という人物像に迫りきれていないという批判もあがっています。時子は作品全体の中心に存在するはずの“死者”ではあるものの、その突出した才能や生前の魅力がいまひとつ読者に伝わらないという意見があるのです。彼女の死の真相を解明することが最終的なテーマでありながら、肝心の時子のキャラクター性が読者に響かない場合は「結局そこまで気にならなくなってしまう」と感じる人もいるようです。
とはいえ、これらのマイナス面は「恩田陸に派手な推理劇を期待していた」という読者にとっての評価基準かもしれません。ゆったりとした会話劇と、女性の内面描写を楽しみたい読者には大きな問題にならない意見とも言えます。
木曜組曲 〈新装版〉(徳間文庫) はどんな人におすすめ?
- 女性同士の駆け引きや心理戦をじっくり味わいたい人
- 「食べる描写」や「飲む描写」を楽しむのが好きな人
- 本格的な殺人事件の謎解きよりも、人物描写を重視する人
心理ミステリーと言えば、「どう謎が解決するか」という仕掛けだけでなく、人間関係の機微や心理の揺れ動きが中心となります。本作もまさにそういった路線にあり、トリック重視の作品を求める方よりは、女性同士ならではの微妙な感情のぶつかり合いや、どこか演劇を鑑賞しているかのような緊迫感を楽しみたい方に向いているでしょう。
また、大森寿美男氏が「恩田陸劇場」と呼ぶように、恩田作品の世界観に入り込みやすい人にはおすすめしやすい一冊です。飲み食いをしながらの雑談シーンからふと見え隠れする本音や、過去の思い出がよみがえる描写など、“空気感”で読ませる要素が多いのが特徴です。
映画版も存在するため、まず映画を観てから原作を手にとって「違い」を楽しむ読み方もできます。原作では物語のクライマックスがより理解しやすく描かれているため、映画のラストに疑問を感じた人は、本書を読むと「こういう解釈だったのか」としっくりくるかもしれません。
まとめ
- 女性5人の会話劇と心理戦を中心に、少しずつ死の真相へと近づいていく構成
- 肯定的な声としては「濃密な演劇のような雰囲気」や「食事・お酒の描写の臨場感」を評価
- 否定的な声としては「地味で盛り上がりに欠ける」「時子の魅力がよく分からない」など
- 女性同士のやり取りや細やかな心情描写を好む読者に特におすすめ
「木曜組曲 〈新装版〉(徳間文庫)」は、華やかな謎解きやスピード感よりも、心理描写の妙によって物語を引っ張るタイプの一冊といえます。女性5人の会話が楽しそうでありながら、同時に物語の重心となる死の謎に少しずつ迫っていく過程が醍醐味です。
一方で、派手な仕掛けやこれでもかという大どんでん返しを期待している方にはやや物足りないという評価もあり、「読む人を選ぶ」作品とも言えそうです。とはいえ、恩田陸さんの独特の文体と臨場感、そして女性同士の繊細なやり取りが醸し出す舞台劇的な雰囲気は、多くの根強いファンを獲得してきました。
総じて、重厚な人間ドラマやややスローに展開される会話劇を好む方にはじっくり味わえる一冊でしょう。映画とあわせて楽しむことで、より物語の奥行きを感じられる点も魅力のひとつです。恩田陸作品の入門としては好みが分かれるかもしれませんが、興味を持った方はぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
木曜組曲 〈新装版〉 (徳間文庫)
- 耽美派小説の巨匠・重松時子が薬物死を遂げて四年。時子に縁の深い女たちがうぐいす館に集い、思い出に浸る中、謎のメッセージが届き疑惑と秘密が交錯する。
- 死の真相は自殺か他殺か。ライターや作家、編集者らが明かす告白の応酬が息をのむ、深層心理を描くミステリー『木曜組曲〈新装版〉』。
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