すべての、白いものたちの (河出文庫 ハ 16-1)
- アジア初のブッカー国際賞を受賞したハン・ガンの傑作が文庫化。おくるみ、雪、骨など白いものに託し、生と死の儚さを重ね合わせた65の断章が深く胸を打つ。
- 朝鮮半島の記憶とホロコースト後のワルシャワが交差し、生後すぐに亡くなった姉を想う旅となる。訳者補足と平野啓一郎の解説も加わり、読み応えはさらに広がる。
- 韓国の作家ハン・ガンによる、詩的かつ深いテーマが織り込まれた作品
- 「白いもの」というモチーフを軸に、生と死、歴史、人間の痛みを静かに照らし出す構成
- ポジティブな意見としては「繊細で美しい言葉に大きく心を揺さぶられる」といった声が多い
- 悪い評判として挙げられるのは、内容が抽象的すぎて「ピンとこなかった」「理解できない」という読者もいる点
- 歴史的背景や著者の個人的な想いをどこまで共有できるかで、評価が大きく分かれる作品
すべての、白いものたちの (河出文庫 ハ 16-1)について
ハン・ガンは『菜食主義者』でブッカー国際賞を受賞したことで知られ、2024年にはノーベル文学賞も受賞し、国際的な注目を一気に集めました。そんな彼女の作品群の中でも「すべての、白いものたちの (河出文庫 ハ 16-1)」は、詩のように淡く、しかしながら力強い言葉で読む人の心を大きく揺さぶると評されています。特に、この作品には生後すぐに亡くなってしまった姉の存在が重ねられ、同時にヨーロッパ・ワルシャワの歴史や韓国の光州事件の記憶の断片も交錯していきます。
一見すると散文詩のように感じられる構成でありながら、65の短い物語が織りなす「白」というテーマを通じて、生と死、そして歴史と個人の悲哀を描き出しているのが特徴です。著者の故郷である韓国と、ワルシャワという戦渦により破壊と再生を経験した街を対比的に書き込むことで、「白」という清廉な色に、喪失をも内包する濃密な意味が与えられていると言えるでしょう。
すべての、白いものたちののポジティブな意見や口コミについて
読者から寄せられている口コミのうち、ポジティブなものとしては「言葉の美しさに圧倒された」「いっそ詩を読んでいるような清澄な感覚」といった評価が目立ちます。翻訳者の斎藤真理子氏の力によって、韓国語で描かれた独特のリズムやニュアンスが、見事に日本語で伝わるという点も絶賛されています。作品全体を包む静かな空気感と密度の濃い感情表現が、読後にどこか深い余韻を残すと語る人が多く、鞄に忍ばせていつでも読み返したいという声も聞かれました。
また、一見切り離された短い断章たちが、読んでいくうちに一つのストーリーへと収束していく構成に、リピート読書をしたくなる魅力があるのも特徴です。散文詩のようでありながら、章間に込められた物語性がじわじわと浮かび上がってくるため、「もう一度読み返すと、白というモチーフの意味がさらに深く理解できる」という声もあります。また、核となる生きることへの切実な祈りが読むほどに染み入るという感想もあり、心に長く残る作品として支持を得ています。
すべての、白いものたちののやばい噂や悪い評判・口コミについて
いわゆる「やばい噂」やスキャンダルの類は特に見当たりませんでした。どちらかと言えば、この作品に対するネガティブな意見は「理解しにくい」「抽象度が高すぎて、何を言いたいのかわからない」という感想です。詩的表現を多用するスタイルのためか、自分の中で物語としてまとめづらいという読者もいます。
また、巻末に付された平野啓一郎氏の解説が「内容の余韻を壊す」という指摘もありました。著者と訳者があとがきを最小限に留めることを意図したのに対して、文庫化の際の編集部がさらに第三者による長めの解説を載せてしまったため、読後の感情と解説文の温度差が大きかったという声が見られます。作品としては純度の高い文学世界を築き上げているのに、最後で現実に引き戻されたような気分になるという意見もあるようです。
その他、「眠くなるほど退屈」「つまらなかった」という酷評も少数ながら存在します。ノーベル文学賞やブッカー賞という華々しい肩書きが先行し、読者のハードルを上げてしまった面もあるでしょう。こうした высокогоな評価に合わせて読み始めた結果、抽象的すぎて楽しめなかったというギャップを感じる人もいるようです。
すべての、白いものたちのはどんな人におすすめ?
「すべての、白いものたちの (河出文庫 ハ 16-1)」は、静謐な読書体験を好む方に向いています。散文詩ともいえる独特のリズムで、ゆっくりと言葉を味わいながら想像をふくらませるのが好きな方には、とても響く作品と言えるでしょう。
一方で、はっきりとしたストーリー性やエンターテインメント性を求める方には、難解さが先に立つかもしれません。とくに、戦争や虐殺といった歴史的悲劇に対する繊細な追悼と、著者自身の家族史との対比が中心のため、どこか重たく感じられる部分もあります。歴史背景や作者の個人的な思いを前提知識として理解したい方や、抽象的な表現をじっくり楽しめる方であれば、より深く作品世界に入り込めるでしょう。
「韓国文学に触れるのは初めて」「ハン・ガンの他の作品を読む前にどこから手をつけたらいいか悩む」という方にもおすすめとされています。複雑な心理描写や会話が多い長編ではなく、短い断章の集合体なので、文章の美しさにゆっくり浸かりながら読み進めやすいという利点があります。
まとめ
「すべての、白いものたちの (河出文庫 ハ 16-1)」は、ハン・ガンという韓国作家が紡ぎ出す詩的な散文群であり、ノーベル文学賞作家としての資質を改めて感じさせる作品です。白というモチーフが担う象徴的な役割、生と死の境目をそっと照らし出すような文章、そして歴史的トラウマを背景にした再生の物語が折り重なっています。
悪い評判ややばい噂という点で特筆すべきものは見受けられませんが、抽象的表現が多いがゆえに「筆者の内面をなぞるだけに感じてしまう」という読者意見がいくつかあるのも事実です。とはいえ、広く見れば「読めば読むほど味わいが深まる」「言葉の連なりが美しく、思わず何度もページをめくる」という肯定的な評価が圧倒的に多い作品でもあります。日本語訳の質が高く、韓国語の表現の妙がある程度分かりやすい形で伝えられるのも特長であり、韓国文学の魅力を知りたい方にとっては格好の一冊と言えるでしょう。
もし、歴史と個人の記憶、虚ろと再生を情緒豊かに感じ取りたいのであれば、この作品はあなたにとって静かでいて深い読書体験を与えてくれるはず。あえてスピードを落として、思考や感情の襞をゆったりとなぞりながら読み進めると、白という色が持つ豊かな多義性を成層的に味わうことができるでしょう。
すべての、白いものたちの (河出文庫 ハ 16-1)
- アジア初のブッカー国際賞を受賞したハン・ガンの傑作が文庫化。おくるみ、雪、骨など白いものに託し、生と死の儚さを重ね合わせた65の断章が深く胸を打つ。
- 朝鮮半島の記憶とホロコースト後のワルシャワが交差し、生後すぐに亡くなった姉を想う旅となる。訳者補足と平野啓一郎の解説も加わり、読み応えはさらに広がる。
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